RIZINドーピング疑惑騒動に関する見解(お気持ち表明)

RIZINドーピング疑惑騒動に関する見解(お気持ち表明)

平本蓮ドーピング疑惑問題の続きです。

朝倉未来×平本蓮、二人の物語の結末は?│トライアーティスト公式ブログ (triartist.co.jp)

どう決着する?平本蓮ドーピング疑惑問題!│トライアーティスト公式ブログ (triartist.co.jp)


9/5(木)にRIZIN榊原代表とドクター3名によるの記者会見が行われました。RIZINが「大会当日」に行ったドーピング尿検査の結果は……?

ドーピング疑惑疑惑騒動について、トライアーティスト竹内鉄平の見解(お気持ち表明)です。

ドーピング検査結果

朝倉未来、平本蓮ともに白(陰性)という結果でした。RIZINとしては、今回の疑惑に対しては「白」との判断、追加の血液検査等は行わないという判断でした。

しかし、その一方で、今回の騒動を引き起こした平本の行動(禁止物質を含む薬物を購入したこと)に対して反省を促すとともに、これまでの大会当日のみの検査を、血液検査を含めて抜き打ち検査を実施していくこと、ドーピングが発覚した場合の厳罰化など、RIZINドーピングポリシーを改定して対応をとっていくという旨が榊原代表の口から語られました。

https://youtu.be/-zsW0–MgmM?si=cE6NXPBB-J0kXDQG (会見の要点要約・タップアウトTV)

良かった!平本シロだった!これにて一見落着!…となるわけもなく…ネットでは大炎上。
一旦燃えた炎は鎮火することなく、様々な格闘家、インフルエンサー、朝倉未来ファン(信者)、平本蓮ファン(チルドレン)、医療関係者、ステロイド専門家!なども参入し、火は燻り続けています。

RIZINのドーピングチェック体制の隙はいくらでもあり、サイクルを組めば尿検査では陽性にはならないこと、状況証拠的には限りなクロに近いグレーだったとしても、ルールで定められた検査結果がシロであれば、世間からの評価はともかく、罪には問われないということが証明された形となりました。

格闘技を「エンタメ」として消費する我々

自分についていえば、4年間に渡る朝倉×平本のストーリー作りから、試合内容について、とても面白く見てきました。ドーピング疑惑が噴出した試合後のこの1ヶ月間のもろもろの出来事の方が、非常に興味深く、まるでNETFLIXのドラマを観ているような感覚になり、毎日ネットでウォッチしつつ楽しんでいる自分がいました。

あくまで我々は「当事者」ではなく、格闘技を「エンタメ」として消費している「消費者」に過ぎません。格闘技はオリンピックを頂点とする競技スポーツとは性質が異なり、こういうゴタゴタを含めての興行なんだということを再認識しました。これまで、多くの格闘団体でドーピングについてはバレなければ白であり、興行主としては積極的に対策をとってこなかったということも理解しました(ドーピング検査には莫大なコストが掛かる)。

ただ、いちアスリートで、いち格闘技ファンの自分からすると、多くの方がそうであったように、一応の結末をみた今回のドーピング疑惑は、非常にスッキリとしない、モヤモヤが残る結果となりました。何人かの発信者(ストラッサー起一さんなど)の意見には非常に共感するところもあり、救われたりもしましたが、熱狂的なファンや関係者の意見の多くは、それぞれの立場での「お気持ち」を表明しているにすぎず、立場が変われば言うことも180度変わるという「ポジショントーク」だと感じました。

以下に自分(ファン・選手・運営者)の3つの視点からの見解を記しておきたいと思います。

ファンの視点から

にわかファンではあれど、3年ほど前から朝倉未来をきっかけに格闘技に興味を持ち、そして朝倉に憧れる一方で、SNSを活用し攻撃を繰り返すことでストーリー(因縁)を作り上げ、朝倉に見事勝利した平本蓮の戦いは、まさにバトル漫画を見ているような感覚で、それぞれに感情移入し、世紀の一戦は最高の興奮で幕を閉じた…はずでした。

その後、平本のドーピング疑惑により、平本マジかよ!?チート(ドーピングパワー)で朝倉未来を引退に追い込みやがって、絶対に許せないからな!ドーピング検査の結果が陽性であって欲しい!と願った多くの朝倉未来ファンと同じ気持ちになりました。

やはりスポーツである以上「公平性」という大前提があるからこそ、どちらが勝つのか?わからないドキドキハラハラがあり、楽しめるのだと思います。ルールで許される範囲であれば、何をしてもよい、という考え方もありますが、すべてをルールで規定することは難しく、どうしても抜け穴は存在します。その領域を侵して勝ったとして、その勝ちに価値は果たしてあるのだろうか?と。

選手としての視点から

今回の騒動を選手としての視点から見れば、絶対に負けられない戦いにおいて、ルールでは禁止されていたとしても、法には触れず、検査に引っかからず、しかも副作用がない(あっても少ない)薬物が手に入る環境にあったとしたら、それに手を出してしまう気持ちは理解できます。しかも周りがみんなやっているという状況であれば、心理的ハードルは更に下がるでしょう(環境が大事)。

特に、競技一本でやっている選手、完璧を求める選手であればあるほど、そうした誘惑に対して、打ち勝つ相当な心の強さがなければ、魔が差してしまうことが容易に想像できます。朝倉未来が連敗しても、ドーピングに手を染めなかった理由は、クリーンなアスリートでいたいという気持ちもあるかと思いますが、何より格闘技以外の収入源を持ち、「格闘技がすべてではない」ということが大きかったのではないかと思います。

自分自身においては、ナチュラル派で、薬を使うこと自体に強い忌避感があるので、過去にドーピングをしたことはなく、絶対にしない…と言い切れますが、その立場になってみなければわからないこともあります。選手は、「今」が一番大事なのです。たとえ年をとって副作用で体がボロボロになったとしても、「今」勝てるならば…と思ってしまうのが選手の心理です。悲しいですが人間は弱い生き物です…。

だからこそ、オリンピック競技となっているスポーツでは非常に厳しいドーピングコントロール(検査・罰則)が行われているのです。それでも完璧ではなく、オリンピック競技でのドーピング違反者も出ますし、出てなくても使用している選手はいるでしょう。格闘技、しかも一民間団体であるRIZINで、今後検査を厳しくしていくとしても、どこまでそこをコントロールできるのか?は疑問符が付きます。

運営者としての視点から

100%のコントロールができないのであれば、表向きのルールでは「禁止」をうたっておきながら、暗黙の了解で、当日の検査だけは陽性を出さないようにしろよ、としてきたのが今までのRIZINでしょう。RIZIN以外の国内格闘技団体では、当日の検査すら導入されていない現状があります。

抜き打ち検査を行い、陽性が出てしまった場合、RIZINのようなビッグイベントは、チケットの払い戻しやスポンサーへの説明、対戦カードの変更など、興行に大きな影響が出てしまうことは避けられません。検査費用のコストも増大し、選手に対しては、もしドーピングが発覚した場合、相当な罰則(違約金)を設けなければなりません。果たしてそれでビジネス(興行)として成り立つのか?というジレンマに陥ります。

しかし、ドーピングが野放しになれば、まず選手寿命は確実に縮まります。今回の騒動で、最先端の薬物名や使用方法まで報じられています。影響力を持った選手がドーピングをしていたということが知れ渡り、重い罰則が科せられないとなれば、薬物使用に対してのハードルが下がり、実社会への悪影響も確実に生じるでしょう。運営者が毅然とした対応を取らなければ、トップ選手のみならず、アマチュア選手やライト層まで使用が広まることが懸念されています。

なので、今回の榊原CEOは非常に難しい対応を迫られていたと思いますが、疑惑は疑惑として、検査結果をすべてとし、ルールを後から変えることはできないため、平本を処罰することはできず試合成立。今後はこのようなことが起きないように、検査を厳しくしていくという対応でした。しかし、朝倉未来に対しての懺悔・贖罪の言葉には、隠しきれない榊原CEOの感情が溢れていましたね。

RIZINは今後どうしていくべきなのか?

RIZINという総合格闘技団体は、莫大なお金が動く興行(ビジネス)である以上、純粋な「スポーツ」というものだけではない、様々な思惑や触れてはいけない闇が存在します。しかし、視聴者には「クリーン」で「フェア」なスポーツ競技としての幻想を抱かせ続けなければ、ファンは離れていきます。

またファンだけではなく、クリーンな戦いがしたいといったポリシーを持つ格闘家も、ドーピングしなければ勝てないのであれば、やる気(モチベーション)を失って離れていってしまうでしょう。深く語らず引退の意思を固めた(ように見えた)朝倉未来の敗戦後の姿はまさにそんな感じでした。

代わりとなるスター選手が何人もいるならばよいですが、ドーピングのイメージがついてしまった平本蓮を今回なんの処分をしなかったのも、次のイベントのマッチメイクを見据えてのことだと思います。

つまり短い目で見れば、臭いものには蓋をしろ!隠せ!でよいと思いますが、長い目で見たときに、ドーピングに対して、厳しいジャッジ、対応をしないことは、RIZIN自らの身を滅ぼすことになるのではないかと自分は思います。

アスリートとしての哲学を持つことが重要

実際にドーピングを行った選手たちは体を確実に蝕むことになります。一時的には美味しい思いをしたとしても、あいつはドーピングをしてるんではないか?という疑惑をかけられ、ダーティーなレッテルを貼られて、いつかはバレるんではないか?という恐怖と戦い続けることにもなり、精神的にも肉体的にも追い詰められていくことになるはずです。選手を守るためにも、なぜドーピングをしてはダメなのか?について、運営側の啓蒙活動、特に若い選手に対しての教育が重要になってくると考えます。

これは何も格闘技に限った話ではなく、すべてのスポーツに当てはまる話だと自分は思います。最終的にはその選手が持つ人生哲学に関わる問題です。レベルを問わず、競技会(レース・試合)に出場するアスリートは自分自身が何のために競技をしているのか?勝ち負けの先にある真の目的は何か?常に問いかけ、答えを出す努力をし続けなければいけないと思います。

この話題については、また進展があれば書きたいと思います。