トライアスロン大会中止の理由は?

トライアスロン大会中止の理由は?

トライアーティストの竹内鉄平です。普段はトライアスロンスクール、スポーツイベント(トライアスロン・トレイルラン・ロゲイニング等)の企画運営を行っています。

今、緊急でブログを書いています。
2025年、トライアスロン界に異変が起きています。

以下、JTU公式サイト大会カレンダーより抜粋。

2025年に開催が予定されていた大会がいくつか中止発表されています。開催を発表しており、中止となったのは上記の2大会ですが、他にも今年中止、今年で終了する大会もいくつか存在しており、自分が把握しているところで、全トライアスロン大会の10%程度の大会が中止、もしくは存続の危機に陥っているようです。

2024年時点で多くの大会で定員割れを起こしていたトライアスロン。予想はしていましたが、やはりきたか…という感想です。

トライアスロン大会運営事業をしている弊社としては、死活問題です。現状の分析、課題の抽出、対策は必要不可欠であると判断し、トライアスロン大会の継続が難しくなる真の理由、原因は何なのか?を考えてみたいと思います。

アイアンマン70.3東三河ジャパン開催中止の件

まずは、昨年の12月9日に開催中止が発表された「アイアンマン70.3東三河ジャパン」について。この大会は、2023年に初開催された大会で、それまで10年間開催されていた「アイアンマン70.3セントレア知多半島ジャパン」の後継イベントです。

2024年はコースとなる生活道路が規制される地元住民の負担の大きさなどの理由により、開催見送り(延期)となり、満を持して2025年の開催を発表、記者会見も行われていましたが、それ以降話題に上がらず、2025年度も開催中止発表となりました。

『2025アイアンマン70.3東三河ジャパン』開催中止 交通制限等で地元住民から十分な理解得られず

中止の理由としては、公式サイトによると「大会開催日までに開催に必要な諸要件を満たすことが困難であると判断」とのこと。一番の理由は、「長時間にわたり交通が制限されることなどに関してコース周辺の住民らから十分な理解が得られなかった」ということでしょう。

上記のYahoo!ニュースのコメント欄を見てみると以下のようなコメントが並んでいます。

参加された選手の声としては、よいコースだったという意見が大半でした。しかし、地元目線では迷惑以外の何物でもない、という意見が大多数のようです。上記の記事、コメントを読む限りでは、一番の問題は、ロケーションにより制限される(許される)コース設計条件についての運営者の理解不足、つまり地域に見合ったコース設計ができていなかった点にあると思われます。

これは、大会運営者ならば、必ず悩まされるジレンマではありますが、トライアスロンは公道の使用許可を得られなければ開催不可能であるという点で、強い社会性を持つスポーツイベントであるという絶対に忘れてはいけない視座になります。

同じ渥美半島で開催されている伊良湖トライアスロン大会は今年で39回を数える人気大会です。長年続けてこられた大会だけあって、交通量の少ない道路を使った周回コースで、交通規制の範囲も限られています。だからこそ地元優先・地域密着で続けてくることができたのだと思います。

もう一方、コース範囲が広くなるということは、それにかかる安全管理体制、大会資材の予算が膨れ上がるということです。いくら相場より高い6~7万のエントリー費を徴収したところで、2023年大会の700人規模ではとても収支は合いません。その穴埋め(補填)は誰か(行政=税金?協賛企業?)がしなくてはならなくなります。そういった理由もあったように推察します。

霞ヶ浦トライアスロンフェスタ中止の件

「霞ヶ浦トライアスロンフェスタ」中止発表 物価高騰などで予算合わず…関東念願のロング開催断念

3月3日に霞ヶ浦トライアスロンフェスタ中止が発表されました。こちらは、関東念願のロングディスタンスの大会として、今年1月初旬よりエントリーを開始。自分の周りの方も数名エントリーをされていましたが、エントリー開始後の中止発表ということで、なぜ?とトライアスロン界隈では話題になっていました。

公式発表によると、「支出予算以上に物価高騰や人件費増などが伴い、大幅な予算見直しとなったため」とのこと。詳しく見てみると、「予定していた助成金関係・補助金関係が本年度は叶わず、現在の参加募集状況等に加え、更に支出予算以上に物価高騰や人件費増などが伴い、大幅な予算見直しとなり中止の判断」という話でした。どうやら「予算」の問題が一番の原因のようです。

今まではミドルでの開催であったわけで、ロングにしたことが原因なのか?はわかりませんが、ロング開催となると、エントリー費は値上げできても、その分出ていくコストは大きくなります。これはお金の面だけではなく、人的なコストも含めての話です。

予定していた助成金関係・補助金関係が入らなかったというのも大きな要因の一つと思われますが、補助金や助成金は、「申請」→「審査」→「承認」→「交付」という流れであり、いくらなんでも100%絶対にもらえるなんてことはないわけで(もしそうであったならば、見通しが甘いと言わざるを得ません)、補助金がなかったとしても、定員が埋まれば、ぎりぎり開催できるレベルではあったはずです。

ということは、おそらく見込んでいたほどエントリーが伸びず、このままエントリー期日まで受け付けても、損益分岐点を大きく下回るであろうという予想がたったのだと思います。そういった意味で、エントリー締め切りまでまだ時間がある中での運営側の中止判断は、傷が浅く済みますから英断であったと思います。

トライアスロン離れを「抽象度を上げて」考えてみる。

取り上げた2大会だけを見ても、大会によって中止の理由は様々ですが、定員割れによる大会収支の悪化が大きな要因の一つにあるのは確実だと思います。弊社がディレクションを行っている「伊勢志摩・里海トライアスロン大会」においても、今のところ毎年定員となっていますが、定員割れすれば当然規模縮小、もしくは継続ができなくなるという危機感を感じています。

霞ヶ浦トライアスロンフェスタ中止のYahoo!ニュースのコメント欄を見てみると以下のようなコメントがありました。

コロナ禍で落ち込んだトライアスロン人口は多少は戻りましたが、完全には戻ってきていません。コロナ前の7~8割くらいといった感じです。上記のコメントにある、肌感覚「トライアスロン人口減少・トライアスロンにお金を回わす余力がない」は、間違っていないと感じます。日本人が「貧困化」してきているのです。

2021年以降、自分はトライアスロン界だけではなく、日本全体のマクロな社会環境、経済状況に対して、相当な危機感を抱くようになりました。なぜ現在の日本人の貧困化が急速に進みつつあるのか?その原因はどこにあるのか?次回は、そういった視点からもう少し「抽象度を上げて」日本社会全体を取り巻く環境を考えてみたと思います。これはトライアスロン大会の今後を考える上でも非常に重要だと思うからです。