日本の貧困化の原因は??

前回は、トライアスロン離れ(トライアスロン大会定員割れ)の原因は、「日本の貧困化」にあるという話をしました。「トライアスリートは富裕層が多い」という声も聞きますが、弊社のトライアスロンスクールに通っていただいている会員さんの大多数は、不況のあおりをもろに受ける自分のような中小企業経営者、自営業者、会社員や主婦・学生であったりします。実際に売り上げ的にも、コロナ禍中より、コロナ禍後の方が、実際に影響が出てきている実感があります。
それでは、日本が貧困化している理由どこにあるのでしょうか?
自分も一経営者ではありますが、大学で経済学を学んだわけではないので、素人が調べられる範囲の話になりますが、具体的なデータを元に分析していきましょう。
日本の平均給与推移を見てみよう!
2024年4月日経の記事で、2023年の平均賃金、29年ぶり伸び率(ドヤ!)といった報道がありました。
2023年の平均賃金、月31万8300円 29年ぶり伸び率 – 日本経済新聞
上記の記事によると、「厚生労働省は24日、2023年の賃金構造基本統計調査の速報値を公表した。一般労働者の平均賃金は月31万8300円で、22年に続いて過去最高を更新した。前年から2.1%増え、伸び率は1994年の2.6%増以来29年ぶりの高い水準となった。厚労省が速報値を公表したのは初めて」とのこと。
ほら見ろ!賃上げ圧力により、平均賃金が伸びてきているんだから、収入が増えないのは個人の努力不足だ!という声が聞こえてきますが、騙されてはいけません。よく見てください。平均賃金が増えたわけではなく、前年からの伸び率が2番目に高かったということです。
厚労省のデータによると、日本の平均賃金は、1990年代初頭ずっと低下傾向にあります。実際には、賃金のピークは1997年の約467万円ですが、その後2010年の406万円に向かって低下していき、その後は微増していたものの、ほぼ横ばいで、2020年には436万円となっていました。それが2023年は約460万円となり、1997年の元のレベルに(ようやく)戻っただけなのです。

それでは、それは日本だけの現象ではなく、世界の国も上がっていないのではと思われる方もみえるかもしれません。OECD(経済協力開発機構)加盟国の賃金伸び率のグラフを見れば、日本の異常さが一目瞭然です。

あれれ?日本だけが伸びていないよー!?
なぜ日本だけが賃金が上がらないのか?日本国民は勤勉で働きものではなかったのでしょうか?この30年間みんなが仕事をサボりまくって遊び惚けてきたのか?
そんなことはありません。現に生産性は30%増加しています。ほかの主要国においては、生産性の向上とともに、賃金も同程度増加しています。つまり、日本だけが、賃金が生産性の伸びから大きく乖離しているという不思議な現象となっているのです。俗にいう「失われた30年」というやつです。
更に、2022~2024年は、物価上昇(インフレ率3%超)が賃上げ率を上回り、「実質賃金」はマイナスとなっています。物価が上がればお金の価値は下がります。働いても働いても、出ていくお金が増えることで、家計はひっ迫。肌感覚で厳しいなと感じている状況は、実際の数字からも証明されています。

日本は、2020年までは、長い長いデフレ(物価が上がらない)期間にありました。デフレのうちは、賃金が上がらなくても、それほど困らなかったわけですが、2021年以降はインフレ(物価上昇)が起きてきたので、ようやく多くの国民は賃金が上がらないことに対して、「あれ?なんかおかしいぞ?」と気づき始めたのです。
ここまでは、もらえる「お金(賃金)」の話をしてきました。しかし、次に注目する「国民負担率」=「引かれるお金」に目を向けると、さらに恐ろしい事実が明らかになってきます…。
国民負担率の上昇!
国民負担率とは、「租税負担率(税金)」と「社会保障負担率(社会保険料)」を合計したものを、国民の所得(GDP)で割ったものです。令和7年の見通しは「46.2%」となっています。つまり約50%が引かれているということです。ちょうど自分が生まれた昭和51年前後の国民負担率を調べてみたところ約25%でした。つまり50年前と比較すると倍増しているのです。

え!?給与明細見ても、そんなに引かれていないけど?せいぜい20~25%では?という方は騙されています。租税の中には、給与から天引きされる所得税、社会保険料だけではなく、企業が支払う法人税や消費税などの税金を含みます。また社会保険料は、社員が支払う金額と同じ金額を会社が負担しています。
さらに、今後日本ではさらなる増税の改革が検討されています。その一例をあげると…
・独身税(独身者への追加課税)
・走行距離税(車の走行距離に応じた課税)
・ステルス増税(控除廃止や税制改正による実質的な増税)
・贈与税の廃止(相続税との一本化による増税)
・たばこ税の引き上げ
・退職金への課税強化
・社会保険の適用拡大(パートやアルバイトとして働く方の社会保険加入義務拡大)
計画されているこれらの増税を含めると、実際の国民負担率は60%近くに達する可能性があります。さすがにそれだけピンハネされていれば、いくら働いても楽にはならないのは当然ですよね?
「五公五民」とは?
「五公五民」という言葉を聞いたことがないでしょうか?「五公五民」とは、収穫の半分を年貢として納め、残りの半分を農民のものとするという、江戸時代の租税徴収の割合をいう言葉です。江戸時代初期は四公六民でしたが、江戸時代中期の享保の改革以降、五公五民となり、一揆が頻発するようになります。一部の政治家や評論家の間でも、「百姓一揆が起きるレベル」とまで言われるほど、国民の不満が高まっています。
政府は「受益と負担のバランス」を強調し、国民負担率の上昇は社会保障の充実のためだと説明しています。しかし、「増税しても、医療や年金の恩恵を十分に受けられない」、「海外援助や不要な事業に税金を使いすぎている」、「富裕層や大企業が優遇され、一般国民だけが負担を強いられている」と多くの国民は疑問を持っています。
これは、私たちの努力が足りないのではなく、「構造的な問題」であり、特に「政治・政策」に問題(誤り)があるのだということに気付かなくてはいきません。
「良いインフレ」と「悪いインフレ」
「インフレ」には、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。良いインフレとは、「ディマンドプル・インフレ」といい、景気が良い状態で給与が上がって、国民が潤っており、モノやサービスが買いたい人が増えて、高い値段でも売れる状態のことを言います。バブル経済の時などがまさにこの状態でした。

しかし、今の日本は、そうではありません。原材料価格が上昇し、コストが上昇、かつ給料が上がっていないため、消費意欲が下がり、企業が儲からないという「コストプッシュ・インフレ」の悪循環に陥っています。

「悪いインフレ」である「コストプッシュ型インフレ」の際には、どうしたらよいのか?
一番簡単なのは、「手取りを増やす」こと。つまり、税金や社会保険料を下げることです。それにより、国民ひとりひとりが豊かになり、豊かになった国民はバンバン消費するようになります。モノやサービスが売れると企業は儲かります。企業が儲かると、そこで働く従業員の賃金も上がります。賃金が上がると多少のコストプッシュインフレにも耐えられるようになります。
国民民主党の「手取りを増やす」政策である「103万円の壁の見直し」や、二重課税である化石のような「ガソリン税」減税も、もちろん必要です。しかし、税金の中でも景気の調整弁となるのが、「消費税」の減税です。現に諸外国では、コロナ禍の不況においては、消費税を減税していました。
それに対して、現在の政府(=財務省)は減税に対して、強い意志を持って真っ向から抵抗、更なる増税をしようとしています。本当に「バカなの?」「国民を苦しめて殺したいの?」としか思えません。
消費税の「増税」は法人税の「減税」??
1989年から導入された消費税は、当初は3%でした。それが1997年には5%、2014年に8%、そして2019年には10%と段階的に引き上げられてきました。一消費者としての感覚では、3~5%の時にはそれほど大きな負担と感じることはありませんでしたが、2019年以降の10%はコロナ不況もあり、非常に負担に感じるようになりました。まさに「茹で蛙」です。それにより、消費が落ち込んでいったのは確実にあると思います。
消費税は社会保障費に使われている。高齢化社会による社会保障費の増大に対しては、増税が必要だと言われていますが、消費税がそのまま社会保障費としてすべて使われているわけではありません。お金に色がついているわけではないのです。消費税も一般会計に入れられて、それぞれの省庁に振り分けられていきます。
消費税が引き上げられる一方、大企業の法人税は減税されているという事実をご存じでしょうか?以下のグラフを見てください。消費税率が3%から10%に上がり続けた結果、累積「396兆円」の税収増がありました。その同じ期間に法人税率は下がり続けて、累積「298兆円」の税収減がありました。

そもそも企業が賃上げに踏み切れないのは景気回復の兆しが見えないからです。しかし、これはもう「ニワトリが先か卵が先か」の世界です。賃金が上がらない中で消費税が上がれば消費意欲は冷え込み、企業の収益は伸びるわけがありません。法人税減税と消費税増税はいわば「アクセル(減税)とブレーキ(増税)を同時に踏む」状態なのです。
消費税は輸出企業を援助する目的で考案された「輸出補助金」?!
現在、米国を除く約150カ国で採用されているVAT(付加価値税)は、1954年にフランスが最初に導入。フランス政府が自国企業に供与したかった「輸出補助金」は、「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」に違反するため、「自国の輸出企業へ補助金を与える合法的手段」として考案されました。「付加価値税」という名称ですが、「実質的には輸出企業を援助する目的が強い税金」(米公文書の説明)として活用が始まったのです。
先に述べた法人税の減税については、そういう見方もあるよね、という意見もあるかと思いますが、輸出企業に対しては、消費税が還付されている歴然たる「事実」があります。上位20社だけで約2兆円の消費税が還付されています。全体では年間7~8兆円程度が輸出大企業に還付されており、これは国全体の消費税収の約2割程度とされます。

なんと!赤字額が第1位(21年4月~22年3月期)は、「愛知県豊田税務署」で、トヨタやその他の輸出企業に還付された金額から、同税務署管内で中小業者らが納めた消費税額(約676億円)を差し引いた赤字額は4943億円となり、トヨタ1社への還付金額は、約5300億円となって先の推計とも一致!経団連が、今まで一貫して消費税の増税を求めてきていたのにはそういう理由だったんですね。
一方、トランプ大統領は、消費税は関税(=輸出保護税)とみなし、それに対する報復関税をかけると日本政府にも突っ込んできています。関税が上がるのは、輸出企業としてはたまったものではないので、国内でも多少は「消費税を下げろ!」という力が働くのではないかと期待します。トランプ大統領グッジョブ!

消費税は、粗利(売上ー原価)に対して課税されます。「赤字でも支払はなくてはいけない税金」の負担はとてつもなく大きい。弊社のような中小零細企業でも年間3桁万円の消費税を支払っていますが、血反吐を吐くような思いで納めている消費税がすべて、大企業の法人税減税の穴埋めや還付金に使われているということになります。

さて、ここまで現状の日本の経済状況を見てきましたが、一般的な感覚からは、誰がどう見ても「今は減税すべきだ…」と思うはずですが、国が減税したくない、できない理由はどこにあるのでしょうか?
このままでは、庶民の貧困化はどんどんと突き進んでいくでしょう。趣味にかけられる可処分所得は減り、トライアスロン人口はますます減少。多くの大会が赤字に陥り、消滅していくでしょう。
今、日本各地で「財務省解体デモ」が広がりつつあるのはご存じでしょうか?オールドメディアではほとんど取り上げられていないですが、ヒカルや青汁王子などがYoutubeで取り上げ始めたことで知った方もみえるかもしれません。
政府の財政を管理しているのは「財務省」。財務省の官僚は、選挙で選ばれたわけではありませんが、財務省の言うことを聞かない政治家は、政治生命を絶たれ失脚、時には命さえ…というほど、今の財務省は権力を持っているといいます。
やはり財務省が諸悪の根源なのでしょうか?私たちはこの現状をどう捉え、どうすべきなのか?
次回は更に突っ込んで考えていきたいと思います。
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