非常にわかりやすい経済の話~公共選択論とは?~

前回の内容は日本の経済はこの30年間停滞し続けてきており、ここ数年で一気に貧困化が進んできているという「暗い」お話でした。そして、ちょっと難しい経済の話でしたが、今回は「非常にわかりやすい経済の話」をしたいと思います。
経済状況が悪化してきている今、最も効果的な対策は「減税」であるということを述べました。
その一方で、現在の政権与党(自公)は、以下のような対応をとっています。
・消費税減税を断固拒否!
・ガソリン税減税を拒否!
・社会保険料を引き上げ!
・インボイス導入し、個人事業主・フリーランスへの課税強化!
・年収の壁178万円への引き上げ拒否!
なぜ彼らはここまで強く減税に反対し、増税を推し進めるのか?巷でいわれるように、減税したら死んじゃう病にでもかかっているのでしょうか?はたまた財務省が諸悪の根源なのか?
国民のことを第一に考えてくれているはずの国がなぜ??と誰しもが疑問に思うことでしょう。今回はその疑問をズバっと解き明かしていきます。そのために役立つツールとなるのが「公共選択論」になります。ハイ、今回の参考図書を紹介します。

今回の話は、今この世の中で起きている政治・経済の事象を「ざっくりと」理解するためには非常に重要な話になります。そして、我々スポーツ業界に関わるものにとっても、関係のある話です。ぜひ最後までご一読ください。
「公共選択論」から今の世の中を考えてみよう!
現在の世の中の状況は、「公共選択論(Public Choice Theory)」で説明することができます。
「公共選択論」は、経済学の一分野で「政治や政府の意思決定を経済学の視点で分析する」学問です。
簡単に言うと、人々が自分の利益を追求するように、政治家や官僚も自分の利益を考えて行動するという考え方です。つまり、政治は「みんなのために働く完璧なシステム」ではなく、「個々の利害・思惑がぶつかり合う場所」だと捉えます。
経済学では、人は「合理的な選択」をして「自分の得」になることを選ぶと仮定します。つまり、人は自分の利益で物事を考えるということです。人よりも多くもらいたい、得をしたい…などなど。このような利己的な感情は人間が持つ本能的なものであり、誰もが否定はしないでしょう。

公共選択論では、その原理は市場以外の場所でも同じで、つまり政治の世界においても同様だと考えます。例えば、政治家は「票を集めるため」、官僚は「予算を増やすため」に動くことが多いとされます。すべての政治家や官僚がそうだとは言いませんが、政治は「理想」や「正義」で動いているわけではなく、「政治の裏側にはこんな力学があるんだよ」と教えてくれるのが公共選択論になります。
その一方で公共選択論では、市場が失敗する(市場の欠陥)と同じように、政府も完璧ではなく「政府も失敗する」ということを教えてくれます。「政府が介入すればすべて解決!」というわけにはいけないということです。
学校では国や政府が間違うこともあるなんて、決して教えられてこなかったですが、まずは国(政府)やそれを動かしている政治家、官僚が絶対的に正しい!間違わない!公共のために働いてくれている!という思い込み、幻想を捨てることが、世の中の現状を正しく捉えるのには必要となります。
さて、今回のお話はここからが本番です。
世の中にはびこる「レント・シーキング」とは??
公共選択論的に考えると、増税を進める彼らには彼らなりの「合理的な選択」があります。
それが、「レントシーキング(Rent-Seeking)」です。
初めて聞く言葉だ、難しそう…という方が大半だと思いますが、もう少しだけページを閉じるのは待ってください!3分頂ければ、簡単に理解できます。
「レントシーキング」とは、簡単に言うと「努力して何か新しい価値を生み出すのではなく、ルールや政治の力を使って自分や自分のグループに利益を引っ張ってくる行為」のことです。「レント」は経済学で「超過利益」や「不労所得」を意味し、「シーキング」はそれを「求める」という意味です。
公共選択論では、政治家や官僚、そして一般の人々が「自分の利益を最大化しようとする」と考えます。その結果、「政府や政治の仕組みを利用して、特定のグループが得をする状況」が生まれてしまうのです。

政府は税金を集めたり、規制を作ったり、補助金を配ったりする力を持っています。そして、企業や団体は「その力を自分に有利に使ってもらおう」と動きます。例えば、企業が利益団体から政府や国際機関に働きかけ、法律を変えてもらったり、ライバル企業を締め出す規制を作ってもらったりします(これをロビー活動といいます)。
レントシーキングは、誰かが得をしても、社会全体で新しい富が生まれるわけじゃないんです。むしろ、ロビー活動や賄賂にお金や時間を使うので、社会の資源が無駄になります。これを公共選択論では「政府の失敗」の一例として見ます。
政治家は票や資金が欲しいから、特定の団体の要求を聞きやすい。 官僚は予算や権限を増やしたいから、業界と癒着する。 特定の産業が「自分たちを助けて」と政府に頼んで補助金をもらう。結果として、政策が「みんなのため」じゃなく「一部のため」に歪む。つまり「生産性を上げて競争に勝つ」努力をするより、「政治の力で儲ける」道を選ぶことで、社会全体にはマイナスに作用するのです。
国は補助金を配るために税金を集めている?!
国は赤字国債を発行しており、このままでは、日本は財政破綻すると、自分が小学生の時からずっと教えられてきていました。「借金が増えると将来の負担になるから、赤字は減らさないと!」という「緊縮財政」が現在の日本政府や財務省の言い分です。
しかし、MMT(現代貨幣理論)によれば、「円は日本が発行しており、自国通貨で借金する政府は破綻しない」「国債は国民の借金ではなく、国の借金であり、国の借金は国民の収入」という考え方です。実際、日本銀行が国債を買いまくって低金利を維持してる現状があります。
先日、令和7年度の予算が衆議院を通過しました。その総額は115兆5415億円となっています。当初予算としては3年連続で110兆円を超え、2023年度の114兆3800億円を上回って過去最大となります。国は国民にお金を配らないという緊縮財政に取り組む一方で、政府の歳出は毎年毎年増え続けています。

政府与党、財務省が力を持っているのは、「税金を集めて予算を付け、補助金として配る」ことができるからです。その金額が大きければ大きいほど、強大な権力となります。公共選択論的にみれば、国家予算は雪だるま式に膨らんでいき、その中には恐らく無駄な事業も多く含まれていることでしょう。

「補助金」は「激薬」のようなもの。用法用量を守れば、病気を治してくれますが、必要以上に摂り過ぎると体を蝕んでいき、補助金なしでは生きられない体になってしまいます。経済的合理性に基づき、民間企業はもちろん、官僚も政治家、国家でさえも飲みこんでいきます。今の世の中は言うなれば、「補助金ジャンキー(麻薬中毒)、オーバードーズ(薬や麻薬の過剰摂取)」の状態です。世の中の多くの事業は補助金なしでは成り立たないものになっています。
ホリエモンが財務省解体デモを「あんなの意味ない!」とディスっている動画見ましたか?多くの経済評論家に批判され、コメント欄も大炎上しています。これを見ると、ロケット事業で国から約46億円の補助金を受けているホリエモンは自らの経済的合理性(つまりレントシーキング)に基づき、減税に反対、財務省を擁護していることがよーくわかります。スポンサーを悪くいうことはできませんからね。
弊社も幾度か補助金には助けられたことがありますし、補助金をすべて否定するわけではありません。しかし、レントシーキングは、結果として、政策を「みんなのため」じゃなく「一部のため」に歪ませ、競争原理が働かなくなることで、社会全体の効率を下げたり、公平性を損なったりします。
そして、一般の私たちが想像している以上に「補助金ビジネス」「助成金ビジネス」は、社会の隅々にまで根を張り巡らせ、はびこっているという現実があります。
公共選択論は「政府が介入すれば解決!」という単純な考えに警鐘を鳴らし、「誰が得してるのか?」「その裏にどんな力学があるのか?」を考える視点を与えてくれます。国民を豊かに、幸せするための制度が、逆に多くの国民を搾取し、貧困に陥らせていることは本末転倒以外の何物でもありません。
財務省解体デモは効果があるのか?
現在全国に広がりつつある財務省解体デモの目的は、簡単に言えば「財務省の強すぎる権力を削いで、国民のための財政政策を実現する」ことです。
「財務省解体」という言葉はインパクトが強いですが、実際には「物理的に壊す」ではなく、組織の権限や機能を再編成・分割することを指しています。
例えば、
・ 国税庁を独立させて税務調査の権限を財務省から切り離す。
・予算編成権を内閣や新たな機関(例: 国家戦略局)に移す。
・天下りを禁止して官僚の影響力を減らす。
財務省を解体したところで、問題がすべて解決するわけではありません。しかし、多くのインフルエンサー(ホリエモンのような擁護派も含め)が取り上げて、日本社会の問題点を多くの人が知ることになったという点において、大きな意味があると思います。今週金曜、日曜と全国一斉に財務省解体デモが行われるとのこと。自分も都合がつけば参加して実際の現場の様子をレポートしたいと思います。

さて、ようやく今の世の中の仕組み、構造がおぼろげながら見えてきたのではないでしょうか?一つのサンプルとして私が携わるスポーツ業界(=スポーツ庁)の実情、現状を見ていきたいと思います。そこから、我々スポーツに関わるものが今後どうしていくべきなのか?を考えてみたいと思います。
続く!
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