どうするトライアスロン 第12回「なぜトライアスロンをするのか?」

どうするトライアスロン 第12回「なぜトライアスロンをするのか?」

子どもに「お父さんはなんでトライアスロンをしてるの?」と聞かれたことはありますか?
または、同僚や友人、後輩でも構いません。「トライアスロンって何の役に立つんすかww」と冷やかし半分に尋ねられたことはありませんか?

トライアスロンを長く続けていると、トライアスロンをやったことがない人や興味のない人から、上記のような、ある意味純粋な、確信をついた質問を受けることは1度や2度はあるのではないでしょうか?あなたはそんな場面で何と答えますか?

長く続けてきた方ほど、始めた当初の純粋な気持ちを忘れてしまっており、答えに窮してしまうことがあるかもしれません。

そんなときは、「そ…それはだな…やってみればわかるんだよ!(やってみないと分からない)」と一蹴に付してしまってもよいですが、貴方の答えに納得した相手がトライアスロンに興味を持ってくれ、自分もやってみたい!と思ってくれるかもしれません。

どうするトライアスロン第12回は、「なぜトライアスロンをする(している)のか?」について考えてみたいと思います。

どうするトライアスロン第12回
なぜトライアスロンをするのか?」

「なぜトライアスロンをするのか?」

その理由、モチベーションとなるものを自分の経験も踏まえて、ざっと思いつく限り挙げてみました。

好き。
楽しい。
モテたい。
健康になる。
友達ができる。
自分に向いてる。
達成感を得られる。
体がシェイプされる。
生活にメリハリがつく。
身体を動かすことが好き。
できないことに挑戦したい。
自己の限界に挑戦し続けたい。
大会で入賞してお金を稼ぎたい。
プロトライアスリートになりたい。
日本選手権で優勝し有名になりたい。
セルフマネジメント力を向上させたい。
トライアスロンをテーマに本を書きたい。
世界選手権等に日本代表として出場したい。
ライフスタイルスポーツとして取り組みたい。
同じ趣味を持つ仲間と一緒にワイワイやりたい。
目標に向かって頑張る姿を見せて勇気を与えたい。
「諦めなければ夢120%」を自分の結果で証明したい。
周りから一目置かれることで自己承認要求を充たしたい。
トライアスロンを世の中に広く普及し、メジャーにしたい。
(なんとなく文字数順に並べてみました)

経験年数や競技レベル、その人のバックボーンによっても、いろいろな答えがあると思いますが、誰でも一つや二つは当てはまるものがあるのではないでしょうか?逆に一つも当てはまらなかったという方は、何を動機にトライアスロンをしているのか?教えてほしいです。

そもそもトライアスロン自体がチャレンジングな性質をもったスポーツであるため、「挑戦」自体に価値がある、という見方ができます。その挑戦による達成感や充実感を仲間と共有できることも大きな魅力の一つといえますね。

トライアスロンから離れてしまう理由

しかし、最初のうちは成長が感じられ、楽しかったトライアスロンも、長く続けていると、加齢やケガによって以前のようなパフォーマンスが出せなくなりモチベーションが上がらなくなってくることもあるでしょう。それをきっけけに止めてしまったという方もみえるかもしれません。

また若い人では、学生時代、競技に打ち込んでいたけど、社会人になって時間的な余裕がなく、経済的にもキツイので続けられなくなってしまったという方も多いでしょう。特に30代~40代は働き盛り、かつ子育てもあるため、経済的・時間的な制約からトライアスロンどころではない、という現在の社会の現状もあると思います。

自分はトライアスロンを30年以上続けてきましたが、20年を越えたあたりから、「成長する喜び」や「挑戦」という価値観のみでトライアスロンに対するモチベーションを維持し続けるのには限界があると感じるようになりました。

トライアスロンをすること自体がストレスになっているという方もいるかもしれません。自分の経験からも言えるのですが、プロとして戦っているエリート選手などは、体を酷使し、常に成績やランキングを気にして戦っているので、そのストレスは相当なものがあります。また一般のアスリートでも順位やタイムが悪いと自己嫌悪に陥ったり、モチベーションが下がってしまったり、ハードなトレーニングにより燃え尽きてしまった、という人もいるかもしれません。

それでも自分がトライアスロンを続けてきた訳は?
自問自答をする中で、たどり着いた「答え」が「整うトライアスロン」です。

「整うトライアスロン」

「整う」とは、心身合一。
つまり、心と体のバランスの均整がとれた、釣り合った状態ということです。

私たちは社会生活において、様々なストレスを受けています。仕事のストレス、家庭のストレス、人間関係のストレスなどなど。心と体のバランスが崩れたことが原因で命を落としてしまう方もみえます。

トライアスロンは体を動かし、汗を流すことで、そうしたストレスを忘れさせてくれます。また、仕事や家庭以外の人間関係、つながりを持つことは社会的な動物である人間にとっては非常に大切なことです。

そして、その結果、自分自身を「整える」という効果があることに気づきました。

「整う」ためには、まずは「自分と向き合うこと」、そして「今の自分を受け入れること」が必要です。つまり、「自分の現状を把握して、他人や過去の自分と比較するのではなく、ありのままの自分を認めてあげること」が必要なのです。

トライスリートは、泳いだり、自転車を漕いだり、走ったりすることで、常に自分と向き合う時間を作ることができます。調子が良い日もあれば悪い日もあるでしょう。そういったときにも自分を偽ることなく、無理をせずに、今日できることを、できるだけやる、というスタンスです。そうすることで初めて、心と体のバランスが取れた「整った」状態になることができるのです。

そこには勝った負けた、速い遅いという相対的な価値観はなく、背伸びをして自分の強さを偽る必要もありません。ライフスタイル(生活様式)としてのトライアスロン(泳ぐ・漕ぐ・走る)があるのみです。大会での勝ち負けにも大きな意味はなく、大会に出なかったとしても、そこには確かな「トライアスロン道」が存在します。

そのような価値観を持ってトライアスロンを生涯スポーツとして嗜む(たしなむ)ことができれば、きっとあなたのライフスタイル、そして「人生」は、より豊かなものとなるでしょう。そうなったときに初めて「トライアスロン」はお金には替えられない価値のあるもの、生涯取り組むべき「道」そのものとなります。

それが「整うトライアスロン」です。
いかがでしょうか?

自分もまだまだ未熟で、道半ばではあります。これまでの競技人生を振り返ってみると、プロトライアスリートとしてシドニー・アテネを目指し、日本ランキング3位まではいったものの、破れてとオリンピック戦線から離脱。そして自分の可能性を見つけるためロングに挑戦。ロング日本選手権2位の結果は出せましたが、やっぱ向いてないやと、再びショートに戻り、エイジ(年代別)に降りて、そこでも順位やランキングを目指して戦い、その結果ケガをしてしまい…。好きなトライアスロンだからこそ、無理をしてまでレースに出て、競技生命を削ってきました。

そんな30年余りの競技経験を経て、ようやく「整うトライアスロン」?笑ってください。でも、この考えに至ってから、記録や順位の呪縛から解放され、トライアスロンをより純粋に楽しむことができるようになり、気が楽になりました。

トライアスロンに興味があるけど果たして自分にできるのか?
しばらくトライアスロンから離れていたけど、復活しようか?
お金がかかるトライアスロンを子供にさせてよいものか?
…と悩んでいる方の参考になければ幸いです。