どうするトライアスロン第2回「距離をどうする?」
- 2023.02.13
- あすたま 竹内鉄平
- トライアスロン 伊勢志摩里海トライアスロン
どうも!トライアーティストの竹内鉄平です。
弊社が企画・ディレクションを行っています「伊勢志摩・里海トライアスロン大会」2023年の大会概要が公式に発表となりました。
伊勢志摩・里海トライアスロン大会の公式サイト (shima-tri.com)
第10回記念大会となる今回、これまでのスタンダードディスタンス(51.5㎞)ではなく、新たに「スイム2㎞、バイク45㎞、ラン10㎞、合計57㎞」の「志摩トラオリジナルディスタンス」の大会としてリスタートすることになりました。
なぜ今回距離を変更することにしたのか?
そこには合理的な理由と、レースディレクターとしての「想い」があります。
公式サイトにも掲載頂きましたが、その経緯と理由を、もう少し詳しくこちらでも解説したいと思います。
志摩トラにエントリーを検討されている方、また大会運営の裏側について、興味のある方はぜひご一読ください。
「Re:Start」に込められた想い
まず、今回の大会キャッチコピーである「Re:Start」に込められた想いについてご説明します。
皆さんご存じの通り、2020年からコロナ禍が始まり、志摩トラも他のほとんどのスポーツイベント同様開催ができなくなり、1年間延期(エントリーを翌年に繰り越し)となりました。
スタッフ一同、2021年こそ…という想いの中、準備を進めていきましたが、コロナ禍は終息せず、地元の負担軽減のため、半分の距離(スプリント)への短縮を提案しましたが、最終的には実行委員会判断で中止となりました。
そして昨年(2022年)、地元からは不安視する声があがる一方で、地域に元気と活力を与えるためにも開催して欲しい、という声、気運が高まってきたことで、予定通り開催が決定しました。
ただ、2022年関しては、コロナ前は前日に開催していたアクアスロン大会も開催せず、コロナ対策を徹底しつつ縮小した規模での運営となりました。
大会前日、台風の影響による豪雨で開催が危ぶまれ、バイクコースの危険個所を無くすため、13.3㎞×3周回⇒10㎞×4周回の変更はあったものの、みんなの知恵と力を結集することで、無事に当初予定していた距離で開催することができました。
2年間越しの宿題をやり切った!という充実感はあったものの、自分たちの中では、あくまでそれはコロナ禍によって「失われた2年間」を取り戻すためのものでした。
2013年からスタートした伊勢志摩・里海トライアスロン大会は、一つの区切りとなる2023年が新たなる歴史のスタートとなります。そこで、「Re:Start」をキャッチコピーにすることに決めました。
多くの方からご支持、ご好評いただいている大会に成長してきた志摩トラですが、改善すべき点はまだまだ多くあります。より安全、公平で、より多くの方に愛される大会の実現のため、新しい形、距離での大会を目指すことにしました。
距離変更の3つの理由
今回の距離「志摩トラディスタンス」を決めたのには三つの理由があります。
①「公平性」と「安全性」の両立と向上のため。
➁ 開催地への負担を増やさないコース設定。
③ 枠にとらわれず、志摩市浜島町のロケーションを最大限生かすため。
先に述べた通り、2022年の志摩トラは天候不良も重なり、バイクを10㎞×4周回としたことで、コース上の選手密度が高まり、ドラフティング(集団化)が起こりやすい状況となりました。
選手向けのドラフティング違反に対する啓蒙動画などの発信もしましたが、公平なレースを行うためには、できる限り選手が「ばらけた状態」でスイムを終え、バイクパートに移ることが理想なのです。
スイムの距離を1.5㎞から2㎞に伸ばすことで、より差が広がった状態でスイムを終えることができ、集団化の回避に繋がります。それが自分のドラフティング問題解決への一つの回答となります。
ただ、その一方でスイムが1.5㎞に延びることで、初心者の参加のハードルが上がるといった声もあるかもしれません。
しかし、考えてみてください。3種目の中で、スイムパートでの事故は命に係わることが多いのです(過去のトライアスロン大会で死亡事故の8割がスイムパート)。1.5㎞を泳ぐのがやっとだよいう人は、そもそも大会に出る基準を満たしていないことになります。
スイム1.5㎞を泳げる人は、2㎞だって泳げるはずで、しっかりと事前にスイムトレーニングを積んで大会に参加して欲しいというメッセージになります。加えて、志摩トラのセールスポイントである透明度抜群の「海」を存分に楽しんで欲しいという想いもあります。
「安全面」でいうと、これまでのバイクコースは、下り坂直後の直角コーナーを含むT字コースで設定されていました。過去にもアクシデントが発生しており、安全管理スタッフの配置を手厚くする必要がありました。
その危険箇所をなくした上で、安全なスペースで折り返す1周15㎞の往復コースを設定すると、15㎞×3周回=45㎞という距離になります。選手が密集を避けることは、接触・落車のリスク低減にも繋がります。
欲を言えば、もっと1周回の距離を伸ばして、ワンウェイ往復コースにして欲しいという意見もありますが、コースを設定する上で、開催地への負担を極力減らすことは、持続可能な大会運営において重要な観点です。使用するエリアを限定することで、地元住民への負担を減らすことになります。
ランの距離のみが10㎞のままであるのは、7月の志摩トラは、酷暑のレース環境であり、ランが一番体への負担が大きいためです。愛好家エイジアスリートにとって、トライアスロンはあくまで趣味の一環です。趣味で体を壊してしまっては元も子もありません。
これからのトライアスロンとは?
これまで私は、スタンダードディスタンス51.5㎞(スイム1.5㎞、バイク40㎞、ラン10㎞)の距離に合わせようと、四苦八苦しながらもコースを設計していました。しかし、大切なのは、開催地のロケーションを最大限に生かし、安全かつ公平なレース環境を選手の皆様に提供することです。
以前より、51.5㎞はオリンピックの正式種目であるトライアスロンの競技距離ということで、「オリンピックディスタンス」と呼ばれていました。現在は「スタンダードディスタンス」と呼ばれます。オリンピック自体が形骸化した今、果たしてその距離の拘ることは必要なのだろうか?と。
実行委員会内で協議を重ね、51.5㎞の距離に固執せず、安全面・公平性を最優先し、今までにないオリジナルの距離設定(スイム2㎞、バイク45㎞、ラン10㎞)を行うという結論に至りました。
それは他の大会との差別化を図り、選手から選んでもらえる大会になるというブランティングにも繋がります。どの大会も同じ距離、同じようなフォーマットであるならば、大会がコモディティ(大衆)化することで、逆に目新しさはなくなり、価値は低下してしまいます。
私自身の話をすると、20~30代はエリート選手として、40代に入ってからはエイジ選手として、ランキングを狙ってポイントレースを転戦していました。その時はそこで戦うこと自体に価値を見出していました。
しかし、その結果、自分のキャパシティ以上に多くのレースに参加することで、心身ともに本当の意味での「健康」を犠牲にしてしまい、長期の休養を余儀なくされたという経験があります。
この2年間の休止期間で、いろいろと考えて、自分自身の固定概念(囚われ)を捨て去ることができました。
選手の目線としては…
スタンダードディスタンス(51.5㎞)にこだわらなくてもいい。
ライフスタイルとしてのトライアスロンを大切に、無理なく楽しんで欲しい。
運営の目線としては…
安全で公平なレース環境を実現する。
地元住民への負担を軽減し、持続可能な大会運営を行う。
ランキングやポイントに囚われることなく、選手の皆さんには、より安全で公平なレース環境で、純粋に「トライアスロン自体」を楽しんで欲しい。
それが生涯現役アスリートであるり、レースディレクターでもある自分の想いです。もちろん他を否定するものではありません。いろいろな距離や目標の大会があってこそ、健全なトライアスロン界が発展していくと思います。
志摩トラは志摩トラオリジナルで、トライアスロン界の新たなムーブメントとなる新しい価値観を提示していきたいと思っています。そういった想いに共感していただける方は、ぜひ志摩トラにエントリーをお待ちしています!
エントリー開始は、3月1日(水)12:00~
伊勢志摩・里海トライアスロン大会の公式サイト (shima-tri.com)
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